大判例

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東京高等裁判所 平成12年(ラ)1341号 決定

主文

1  原審判を取り消す。

2  被相続人亡甲野春男の遺産の分割をするにつき、未成年者甲野太郎の特別代理人として丙山夏男(本籍・住所<省略>)を選任する。

理由

第1  本件抗告の趣旨及び理由

別紙記載のとおり。

第2  当裁判所の判断

1  本件記録によれば、以下の事実が認められる。

(1)  亡甲野春男(以下「春男」という。)は、大正五年四月一日、亡甲野一男及びウメ夫妻の六男として生まれ、昭和二五年三月一三日、抗告人と婚姻の届出をした。

(2)  春男と抗告人の間に、昭和二六年三月一六日長男秋男、昭和二七年一一月二五日長女花子が生まれた。

(3)  長男秋男は、昭和六一年四月三〇日、丁山春子と婚姻の届出をし、同女との間に、昭和六三年六月二九日長男として未成年者が生まれた。

(4)  平成一〇年六月二五日、春男及び抗告人と未成年者との養子縁組の届出(代諾者親権者父母)がされた。

(5)  春男は、平成一一年一月三〇日、死亡し、戸籍上、妻である抗告人、長男秋男、長女花子及び養子である未成年者が法定相続人となった。

2  抗告人は、春男の遺産を分割するにつき、抗告人と未成年者との間で利益相反の関係が生じるとして本件特別代理人選任を申し立て(以下「本件申立て」という。)、特別代理人の候補者として未成年者の実母である上記春子の兄である丙山夏男を推薦したところ、原審判は、春男及び抗告人と未成年者との本件養子縁組については、専ら相続税の負担を軽減させる目的を達するためにされたもので、真に縁組当事者間に社会通念上養親子と認められるような関係の創設を欲する効果意思を有するものでなかったことが認められるから、本件養子縁組は無効であり、本件申立てはその前提を欠くとして、本件申立てを却下した。

3 原審判は、本件養子縁組が相続税の負担を軽減する目的で行われたとするが(なお、春男の遺産である不動産について、相続税に関する小規模宅地の特例が適用された場合には、未成年者を除く三名のみが法定相続人であっても、遺産総額が非課税の範囲にとどまる余地がある。)、当該養子縁組がそのような動機のもとに行われたとしても、直ちにそのような養子縁組が無効となるものではないうえ、本件記録によっても、本件養子縁組が養親子関係を設定する効果意思を欠くものであるとはいい難く、本件養子縁組をもって無効であるということはできない。そうすると、春男の遺産分割につき、抗告人と未成年者の間には利益相反の関係があるというべきであるから、未成年者のために特別代理人を選任すべきである。なお、家事審判規則には、特別代理人選任申立てを却下する審判に対して即時抗告をすることができる旨の規定はないが、これは、本件のような理由によって特別代理人の選任されない事態が生ずるということを予定していなかったからであると解されるところ、本件では、原審判が審判対象ではない前提事実の養子縁組の無効を理由に本件申立てを却下していることから、再び特別代理人選任申立てを行うという通常の方法によって対処することができないという特別の事情があり、このような事態を救済する手続を認めるべきであるから、本件即時抗告を適法なものと認める。

そして、本件記録によれば、上記丙山夏男を未成年者の特別代理人に選任するのが相当であると認められるから、当裁判所において審判に代わる裁判をするのが相当である。

4  よって、抗告人の本件申立てを却下した原審判は不当であるから、これを取り消し、上記丙山夏男を未成年者の特別代理人に選任することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官奥山興悦 裁判官杉山正己 裁判官沼田寛)

別紙抗告の趣旨<省略>

別紙抗告の理由<省略>

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